>小部経典
8 テーラガーター
16.6. セーラ長老の詩偈
〔セーラ婆羅門が言った〕「世尊よ、〔あなたは〕円満成就した身体をもち、極めて好ましく、善き出生“うまれ”で、見た目が典雅で、黄金の色艶ある者として存しています。〔あなたは〕歯が純白で、精進ある者として存しています。
なぜなら、善き出生の人に有る、それらの〔三十二の〕特徴ですが、あなたの身体には、それらの〔三十二の〕偉大なる人士の特相が、〔その〕全てが、〔有る〕からです。
眼が清らかで、美しい顔立ち、偉丈夫で、真っすぐで、輝きある者として、〔あなたは〕沙門の僧団の中で、太陽のように、光り輝きます。
見た目が善く、黄金に似た肌をもつ比丘――このように、最上の容貌をもつ、あなたにとって、沙門として〔世に〕有ることが、何になるというのでしょう。
〔あなたは〕車上の雄牛(戦車隊の統率者)たる転輪王として、四辺を征圧したジャンブ洲(全インド)の権力者として、〔世に〕有るのがふさわしい。
士族たちは、地方の王たちは、あなたに付き従う者たちと成ります。ゴータマ(ブッダ)よ、王のなかの王として、人間〔界〕のインダ(インドラ神)として、王権を為されよ(統治せよ)」〔と〕。
かくのごとく、世尊は〔答えた〕「セーラさん、わたしは、王として、〔世に〕存しています。〔わたしは〕無上なる法(真理)の王として、法(真理)によって、〔法の〕輪を転起させます――〔誰も〕反転できない〔法の〕輪を」〔と〕。
かくのごとく、セーラ婆羅門が〔尋ねた〕「〔あなたは、自らについて〕『正覚者である』〔と〕公言なさいます。ゴータマ(ブッダ)よ、〔あなたは〕『無上なる法(真理)の王として、法(真理)によって、〔法の〕輪を転起させる』と語ります。
いったい、誰が、軍団の長ですか。〔誰が〕貴君の弟子として、教師に従い行くのですか。あなたが転起させた、その法(真理)の輪を、誰が、〔後に続いて〕従い転起させるのですか」〔と〕。
かくのごとく、世尊は〔答えた〕「セーラさん、わたしが転起させた〔法の〕輪を、無上なる法(真理)の輪を、如来に〔続いて〕生まれ来たサーリプッタ(舎利弗:人名・ブッダの高弟)が、〔後に続いて〕従い転起させます。
わたしによって、証知されるべきものは証知され、そして、修行されるべきものは修行され、捨棄されるべきものは捨棄されました。婆羅門よ、それゆえに、〔わたしは〕覚者として〔世に〕存しているのです。
婆羅門よ、わたしにたいする疑いを取り除きなさい、〔わたしを〕信じなさい。正覚者たちと一度ならず相見えることは、得難きこととして〔世に〕有るのです。
彼ら(正覚者たち)が一度ならず世に出現することは、まさに、得難きことです。婆羅門よ、〔まさに〕その、わたしは、覚者として、〔毒〕矢の治癒者にして無上なる者として、〔世に〕存しています。
〔わたしは〕梵(最高の人格者)として有る者、〔他に〕比類なき者、悪魔の軍団を撃破する者、一切の朋ならざる〔敵〕を自在に為して、何ものも恐れず、〔自ら〕喜び楽しみます」〔と〕。
〔セーラ婆羅門が、自らの弟子たちに言った〕「諸君よ、このことを、眼ある方(ブッダ)が語るとおりに、こころして聞け――〔毒〕矢の治癒者にして偉大なる勇者が、林のなかで獅子が吼えるように〔語る、そのとおりに〕。
梵(最高の人格者)として有る方、〔他に〕比類なき方、悪魔の軍団を撃破する方(ブッダ)を見て、誰が、〔心が〕清まらずにいられよう。黒き生まれの者でさえも、〔心が清まるであろう〕。
すなわち、求める者は、わたしに従え。あるいは、すなわち、求めない者は、行け。ここに、わたしは、優れた知慧ある方(ブッダ)の現前で、出家するであろう」〔と〕。
〔弟子たちは答えた〕「もし、この、正自覚者(ブッダ)の教えが、尊き方(セーラ婆羅門)にとって、好ましきものとなるなら、わたしたちもまた、優れた知慧ある方(ブッダ)の現前で、出家するでありましょう」〔と〕。
〔セーラ婆羅門が言った〕「これらの三百の婆羅門たちは、合掌を為し、〔あなたに〕乞います。世尊よ、あなたの現前で、〔わたしたちは〕梵行(禁欲清浄行)を歩むでありましょう」〔と〕。
かくのごとく、世尊は〔言った〕「セーラさん、現に見られ時を要さない、〔真の〕梵行は、善く告げ知らされました。そこにおいて、〔気づきを〕怠らずに学んでいる者の出家は、無駄ならざるものです」〔と〕。
〔出家した尊者セーラが言った〕「眼ある方よ、〔まさに〕その、あなたを帰依所として、〔わたしたちは〕やってきたのですが、〔それより〕このかた、〔今日で〕第八〔日〕となります。世尊よ、〔わたしたちは〕存しています――あなたの教えにおいて、七夜をもって調御された者たちとして。
あなたは、覚者です。あなたは、教師です。あなたは、悪魔を征服する牟尼です。あなたは、諸々の悪習(随眠)を断ち切って、〔激流を〕超えた者として、この〔世の〕人々を〔彼岸へと〕超え渡します。
あなたにとって、諸々の〔心の〕依り所(依存の対象)は超え行かれ、あなたにとって、諸々の煩悩は破り去られました。獅子のように、執取〔の思い〕なく、〔あらゆる〕恐れと恐ろしさを捨棄した方です。
これらの三百の比丘たちは、合掌を為し、立っています。勇者よ、〔両の〕足を差し出してください。龍(比丘)たちよ、教師を敬拝せよ」〔と〕。ということで――
……セーラ長老は……。