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9テーリーガーター

13.3.  チャーパー長老尼の詩偈

〔夫が言った〕「かつて、〔わたしは〕杖を手にする者(修行者)として存していた。その〔わたし〕は、今や、猟師である(猟師の娘を妻にした)。〔欲に染まった〕願望〔の思い〕のために、〔わたしは〕おぞましき泥沼から彼岸に行くことができなかった。

〔妻の〕チャーパー(人名)は、わたしのことを、〔妻である自分に〕深く夢中になっていると思いながら、子をあやしていた。わたしは、チャーパーとの結縛を断ち切って、ふたたび出家するであろう」〔と〕。

〔妻は言った〕「偉大なる勇者よ、わたしのために、怒ることがあってはなりません。偉大なる牟尼よ、わたしのために、怒ることがあってはなりません。なぜなら、怒り〔の思い〕に打ち負かされた者に、清浄は存在しないからです。どうして、苦行がありましょう」〔と〕。

〔夫が言った〕「しかしながら、〔わたしは〕ナーラ(地名)から立ち去るであろう。ここに、ナーラに、誰が住むというのだろう。女たちは、〔その〕形姿によって、法(教え)によって生きる沙門たちを結縛する」〔と〕。

〔妻は言った〕「さあ、カーラ(人名)よ、戻ってきてください。かつてのように、諸々の欲望〔の対象〕を享受してください。わたしも、それらの、わたしの親族として存している者たちも、あなたの自在に為すのです(思いのままになる存在である)」〔と〕。

〔夫が言った〕「チャーパーよ、さてまた、おまえが、わたしに語るとおり、ここに、〔その〕四分の一があるなら、おまえにたいし〔欲に〕染まった男にとって、まさに、それは、巨万のものとして存するであろう」〔と〕。

〔妻は言った〕「カーラよ、山の頂きにあって枝葉ゆたかに花ひらいたタッカーリー〔樹〕のような〔わたし〕を、〔実が〕割けたダーリカー(柘榴)の木のような〔わたし〕を、中洲にあるパータリー〔樹〕のような〔わたし〕を――

手足に黄栴檀を塗り、カーシー〔産〕の最上〔の衣服〕を〔身に〕付け、形姿ある者として存している、〔まさに〕その、わたしを、どうして、〔あなたは〕捨棄して行くのですか。

まさしく、捕鳥者が、鳥を結縛することを求めるように、あなたは、魅惑的な形姿で、わたしを捕縛しようとしないのですか。

カーラよ、では、この〔子〕は、わたしにとっての、子という果は、あなたが生ませたものです。子ある者として存している、〔まさに〕その、わたしを、どうして、〔あなたは〕捨棄して行くのですか」〔と〕。

〔夫が言った〕「知慧を有する者たちは、子供たちを捨棄する。そののち、親族たちを〔捨棄する〕。そののち、財産を〔捨棄する〕。偉大なる勇者たちは、象が結縛を断ち切って〔行く〕ように、出家する」〔と〕。

〔妻は言った〕「今や、あなたのために、この子を、棒で、あるいは、小刀で、まさしく、地に打ち倒しましょう。子〔の死〕の憂い悲しみから、〔あなたは〕行きません」〔と〕。

〔夫が言った〕「それで、もし、豺狼(ジャッカル)たちに、山犬たちに、〔おまえが〕子を与えるとして、子を為した卑しむべき者よ、わたしを、ふたたび逆戻りさせることはないであろう」〔と〕。

〔観念した妻は言った〕「さあ、今や、まさに、あなたに、幸せ〔有れ〕。カーラよ、〔あなたは〕どこに行くのですか。どの、村や町へ、城市へ、王都やらへと」〔と〕。

〔夫が言った〕「過去に、〔わたしたちは〕衆師たる者たちとして、〔それも〕沙門でないのに沙門と思量する者たちとして、〔世に〕有った。〔わたしたちは〕村から村へと渡り歩いた。城市を、王都やらを。

まさに、世尊にして覚者(ブッダ)たるこの方は、ネーランジャラー川に向かい、一切の苦しみを捨棄するために、生ある者たちに、法(教え)を説示する。彼の現前へと、わたしは行くであろう。彼は、わたしの教師と成るであろう」〔と〕。

〔妻は言った〕「今や、〔あなたは〕世の主“あるじ”たる無上なる方(ブッダ)に、〔わたしの〕敬拝〔の思い〕を説くべきです。そして、〔覚者に〕右回り〔の礼〕を為して、〔わたしからの〕施物を献じるべきです」〔と〕。

〔夫が言った〕「さてまた、おまえが、わたしに語るとおり、まさに、このことは、わたしたちによって〔現に〕得られた。今や、〔わたしは〕世の主たる無上なる方(ブッダ)に、おまえの敬拝〔の思い〕を説くであろう。そして、〔覚者に〕右回り〔の礼〕を為して、〔おまえからの〕施物を献じるであろう」〔と〕。

しかして、そののち、カーラは、ネーランジャラー川に向かって出発した。彼は、正覚者(ブッダ)が不死の境処を説示しているのを見た。

〔すなわち〕苦しみを、苦しみの生起を、しかして、苦しみの超越を、さらには、苦しみの寂止に至る聖なる八つの支分ある道(八正道)を。

彼(ブッダ)の〔両の〕足を敬拝して、彼に右回り〔の礼〕を為して、〔カーラは〕チャーパーからの〔施物を〕献じて、〔家から〕家なきへと出家した。三つの明知(三明:三種類の超人的な能力、宿命通・天眼通・漏尽通)は獲得され、覚者(ブッダ)の教えは為された。ということで――

 ……チャーパー長老尼は……。